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2013年11月10日 (日)

キャパの十字架

写真「崩れ落ちる兵士」に、でっち上げ説がありながら
批判が封じ込めらているのは何故か?

「崩れ落ちる兵士」は、反乱軍がゲルニカを空爆した
その悲惨さを描いたピカソの「ゲルニカ」と並び
スペイン内戦を象徴する聖なる1枚に昇華した。
その結果、スペイン共和国に想いを寄せる人々にとって
かけがえのない、犯さざるべきイコンになったのである。

この写真を撮ったのは、アンドレ・フリードマンが
ゲルタ・ポホレリ (後のゲルダ・タロー )と共に、
フランスの写真週刊誌「ヴュ」から内戦の地である
スペインに派遣されていた最中である。
アンドレ・フリードマンは撮影済みのネガを現像せず
そのままパリの「ヴュ」に送っていたという。

1936年9月23日、「ヴュ」で初公開されたとき
崩れ落ちる様に倒れる兵士の写真は2枚あった。
それが1937年7月12日、「崩れ落ちる兵士」として
アメリカの「ライフ」が紹介したときは、あの有名な
写真1枚だけだった。

共和国軍 (人民戦線) 兵士が撃たれた写真は
一兵士の死の瞬間というだけではない意味を持つに至る。
いずれ崩壊が予想され、現に崩壊する共和国の運命と、
失われた共和国への熱い惜別の想いを込めた1枚へと
「ライフ」の手によって祀り上げられた故である。

常識で考えるなら、撮影済みのネガには撮影日、
撮影場所、撮影時の状況などを撮影者が添付して
送り出すだろうと考えられる。
だが仮にそうであっても、この写真は一人歩きを
始めただろう。

スペイン内戦では、反ファシズムの立場から人民戦線を
ソヴィエトが支援。
ファシズムの反乱軍をドイツとイタリアが支援して、
さながら第二次世界大戦の前哨戦の様相を呈する。
そこに1枚の写真があり、ファシズムの銃弾に斃れる
「崩れ落ちる兵士」として紹介することは、この上ない
政治的な宣伝と成り得たと推察される。

アンドレ・フリードマンは「崩れ落ちる兵士」について
詳しく語らなかったという。
それは写真が「でっち上げられた1枚」だからか?
キャパしか知りえない、別の真相があるからか?
いずれにしても、この写真が有名になったことで
キャパは重い十字架を背負って生きたのではないか?

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コメント

写真「崩れ落ちる兵士」、NHKのスペシャル見ました。
そのとき感じたのは、「誰が」「いつ」「どこから」を検証した番組でしたが、自分は「こいつ、撃たれちゃった!」でした。
遮蔽物も無い野っぱらで、突撃したら「こうなる」の典型的な画だなと。
被写体の彼が背負っているものとか、なんとか、関係無く、
戦う前線の兵隊のありのままの姿を捉えたなと。

ベトナム戦争時の画で、地雷を踏む兵士の足元を撮った画も見た記憶があります(ちょっと曖昧)、
知っていれば「教えてあげろよ!」と唸った記憶です。

見たもの・聞いたものでしか、判断できませんが
あの写真は、自分ならどうする?
(撃たれた彼・撮った側)いろいろと考えさせられました。

(いつもですが、酔っ払って書いているのでご容赦ください!)

投稿: 川崎 | 2013年11月12日 (火) 21時58分

いっとき、サム・ペキンパーや深作欣二といった
バイオレンス派の映像に浸った身としては
かの写真は物足りない1枚です。
もっと血しぶきが散らなければ・・・
正直、私はあの写真を見て不信感を抱いた側に居ます。

著者は、丘を駆け下りる兵士が、一発の弾丸に撃ち抜かれた場合
後ろに仰け反るには、弾丸に、どれ程の運動量が必要か?
の検証もしています。

「キャパの十字架」は、真贋論争から離れても
スリリングな推理小説を読むような
そんな面白さがある一冊ですが
図書館で借りて読む程度ですかね・・・

投稿: kattu | 2013年11月13日 (水) 23時47分

映画「プライベート・ライアン」の冒頭15分間でノックアウトされた自分です。
すさまじい戦闘シーンに打ちのめされました。

現場を知らないのに軽々には言えませんが、
命令とは言え、突っ込む勇気にわが身を重ねます。

誰かが撮らなければ伝わらない一瞬。
いろいろなことを考えさせてくれる、
と言う意味では一枚の重みを感じますね。

投稿: | 2013年11月14日 (木) 22時59分

詳細は次回以降の本文に委ねたいのですが
キャパは、殆どデビュー作で世界的な名声を得てしまった。
以後、彼はその名声に相応しい写真を撮るべく
常に「本当の戦場」を求め続けた・・・
とは、沢木耕太郎氏の見方です。
その結果としてあるのが「波の中の兵士」となりますか?
ノルマンディー上陸作戦の一コマです。

が、しかし。
この1枚をもってしてもキャパの渇望を潤すものではなかった。
と、著者はいいます。
著者が透かし見る「「キャパの十字架」とは・・・
その真相は如何なものでしょうね。

投稿: kattu | 2013年11月14日 (木) 23時42分

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