江戸の誘惑
江戸の誘惑と題された浮世絵展に出掛けました。 ボストン美術館が所蔵する浮世絵が一世紀ぶりで江戸の地に 里帰りしたものです。
知識乏しき者には浮世絵と聞けば版画しか思い浮か びませんが、今回公開されたのは肉筆浮世絵であるところが非常に貴重です。なにしろ重版が可能な版画と違って、一点ものですから。 まして菱川師宣、鈴木春信、喜多川歌麿、葛飾北斎、歌川広重と 誰でも一度は名前を耳にしたであろう浮世絵師の肉筆作品が並んでいます。
中でも北斎の斬新さには今さらながら感心させられました。 このところテレビのCMで「初めてストップモーションを使った人」といった表現共に、あの有名な富嶽三十六景から神奈川沖浪裏が登場しています。北斎の秀逸さは、その構図や色遣いから素人なりに納得します。 今回の展示で殊更珍しいのは北斎が描いた 幟(端午の節句に門先に飾る)や、祭りで用いる提燈に竜虎や蛇の絵を描いているものです。ひいき筋の依頼か、しがらみで断り切れなかったのか、当代随一の絵師としては当然のことだったのか。その真相は計り知れませんが、どことなく生活感が漂っていて新鮮な 思いをしました。
もう一つ、北斎の娘である葛飾応為の作品を初めて観ました。 この応為は父・北斎の代作を勤めたとも伝わっているようですが、 当然のごとく父の影響を受け、あるいはDNAを引き継いでいるのは明白な作風です。 展示された作品は三曲合奏図という一点だけで、三人の女性が輪になる形で琴、三味線、胡弓を演奏しています。作品のリンクが見付からず、また買って来たポストカードをコピーして紹介できないところが残念です。三人のポーズは、他の浮世絵には見られない特徴を表しています。また楽器を持つ手や、演奏している指先には現代の劇画にも通じるものがあって驚きの一語に尽きます。 名だたる巨匠・大家の作品を押しのけて、私の興味を惹いた応為の作品でした。 添付した写真は、東京・汐留のクリスマス・イルミネーションです。
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コメント
見つけました、葛飾応為の作品「三曲合奏図」。
下記のURLに出てきますが、こんなコトして良いの!?
http://blog.so-net.ne.jp/sunshine25/2006-05-04
劇画的というか、琴を弾く指は人形浄瑠璃の人形のよう。
やはり江戸の感覚からはみ出して見えます。
皆さんはどう感じました?
投稿: kattu | 2006年12月 4日 (月) 22時29分